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同人音声の闇的な話を読んで同人音声業界について調べてみた

 つい先日同人音声の闇的な話というのが話題になりました。

同人界隈におけるトラブルというのは全く歓迎する話ではありませんが昨今めずらしくありません。ただ個人的に同人音声が好きで購入していた身としてはこのような話が同人音声界隈から出てくるのは衝撃的でした。

コメント欄で同人音声にもいわゆる「同人ゴロ」がいるというコメントを見たりして、正直なところあまりピンと来ていないというか、同人音声って同人の中でもかなりニッチなジャンルじゃなかったか?という思い込みがありました。お恥ずかしい話、作品に興味はあっても業界や界隈といった情報には疎かったため、今回改めて同人音声業界について調べました。

前半は同人音声についての具体的な数字を、後半は私的な考えを書きました。なお、今回はDLsiteで販売されている成人向け同人音声に絞って調べていますが*1、どなたでも読んでいただけるように製品名や製品へのリンクなどは省略しています。

同人音声とは何か

まず最初にご存知ない方もいると思いますので簡単に説明します。同人音声とは一言で言ってしまえばドラマCDみたいなものです。シチュエーションに基づく台本があって、それを声優が読み上げたものです。

同人音声は主にDLsiteやDMM同人ダウンロードといったダウンロードショップで購入することができます。また、今回は取り扱いませんが萌えボイスやココナラといった声優さんに直接依頼をかけることができるサイトも存在しています。

年々増える音声作品

まず同人音声がどれぐらい販売されているのかについてですが2016年3月4日現在、DLsiteで販売されている成人向け同人音声は6473作品あります。

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2015年は1年間に販売された同人音声が1321作品と過去最高を記録しました。またグラフを見てわかる通り、販売されている同人音声のうち5665作品は2010年以降になって販売されたものです。

今でこそ毎日のように作品が販売されていますが僕が同人音声の購入し始めた2010年前後は大体3日に1本かもっと少ない頻度で作品が販売されていたような気がします。そこから5年で3倍以上に増えています。

後述しますが作品数が増えていることを歓迎しているかと言えば個人的にはそうでもありません。

同人音声の価格

次に同人音声の価格ですが、下は108円(DLsiteの最低販売価格は108円*2)から上は5000円以上と幅広いです。

価格帯別の販売本数で見るとDLsiteにおいては「500円以上800円以下」から「1,200円以上1,500円以下」に集中しているためここが同人音声のボリュームゾーンでしょう。

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※その他は5000円以上

個人的には作品のコンセプトやサンプルボイスを確かめてピンとくれば購入するので価格を気にしたことはありませんが、作品のボリューム(収録されている音声の時間など。低価格の作品は収録時間が短い)が大きくなれば価格もおのずと上がると思います。

僕はサークル側ではなく一ユーザーなので各サークルが価格をどのように決めているかはわかりませんが、基本的に同人音声は「台本」「音声」「ジャケットイラスト」の3つで構成されていることが多いため音声を声優に、イラストをイラストレーターに依頼した場合そのコストがかかると思いますのそれが価格を左右していると考えるのが自然でしょう。中にはイラストを省略している作品もありますが、作品の性質を考えれば必ずしもイラストが必要というわけではありませんので省略することでコストを下げることは可能だと思います。

加えて、これは同人音声ではめずらしくはないのですが作品がバイノーラル録音*3やハイレゾ音源などを採用している場合、収録や編集に手間がかかると思われるのでその分価格に反映される傾向はあると思います。

ちなみに同人音声の価格帯別DL数トップ3は以下の通りです。

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DLsiteにおいて最も売れた同人音声はDL数が2万以上。他にも1万超えの作品がいくつかあります。では何がそんなに売れているのかを次で紹介します。

人気ジャンル①「催眠」

まずはDLsiteで販売されている成人向け同人音声作品の歴代DL数ランキングトップ20をご覧ください。なおこちらは集計を3月6日にした関係で上記の数字と一部異なっている点があることを予めご了承ください。

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属性の項目、「催眠」が圧倒的に多いことがわかると思います。この、いわゆる「催眠音声」というのは催眠術の技術を盛り込んだ音声作品のことです。

催眠音声は2007年に2ちゃんねるで催眠音声に関するスレッドがたち話題になりました。*4それ以前からも作品は存在していましたが催眠音声は無料の音声が非常に充実しているため、DLsiteで火がついたのは上記のランキングで1位の作品が販売された2009年以降だと思われます。事実DLsiteで販売されている催眠音声は2009年以前は4作品にとどまっていますが昨年は162作品が販売されています(2015年までの販売作品数は481作品)。

一般的に現実社会で催眠術をかけられた経験がある人というのはそんなに多くないと思います。もちろん僕もありません。しかし同人音声で催眠音声を聞いて催眠体験をしたという人は少なくともそれなりにいるわけです。

最初にDLsiteで販売されている成人向け同人音声の数を紹介しましたが、販売数が増えたのは2009年以降です。催眠音声は極めて特殊なジャンルではありますが、この極めて特殊なジャンルがDLsiteの同人音声の下支えになり販売数が増えたのではないかと思います。

人気ジャンル②「耳かき」

もうひとつの人気ジャンル「耳かき」ですが催眠と比べてトップ20には多く含まれていません。耳かき音声はリラックスや癒やしの効果を謳っているものが多いため対象を全年齢にして販売されているものが多く、成人向けは少ないように感じます。

DLsiteで販売されている成人向け耳かき音声は一番古いもので2010年に販売されたもので、ジャンルとしては昨年までに173作品が販売されています(年間で最も多く販売されたのは2015年の83作品)。全年齢の耳かき音声は2016年3月6日までに282作品が販売されています。

ほとんどの人にとって催眠は経験のないものだと思いますが、耳かきの経験がないという人は少ないのではないでしょうか?催眠よりも間口が広いため、同人音声の裾野を広げるという意味で耳かき音声もまた人気を集めているのだと思います。

また耳かきは音声作品と相性がいいことも人気の理由の一つだと考えられます。というのも収録されている効果音によって本当に耳かきをされているかのような臨場感や耳に息をふきかけられたときに味わえるような独特の感覚を得ることができるため支持されているのだと思います。

作品数が増えて質は下がったか?

「催眠」と「耳かき」、この2つ以外に同人音声はどんなものがあるかといえば作品の方向性としては淫語を聞かせるであったり安眠へ誘うものであったり多種多様ですが共通点として成人向けである以上実用性に特化したものであることは間違いありません。要するに「使えるか否か」ということです。

この実用性という部分については最終的には好みや性癖によって左右されるものになりますが、同人作品といえど一定の質は求められていると思います。先ほど催眠音声については無料の音声が充実していると言いましたが、その背景には2ちゃんねるで話題になったことで職人が現れ、実用性の高い作品が作られ、さらにそれが職人を呼んで作品が増えていったということがありました。最初に話題になった場所が場所*5ですから実用性を重視する人が多かったことは明らかで、ごくごくマイナージャンルな同人音声はそういった質の高い作品を求める人とそれに応じる職人やサークルの存在があったからこそ支持されてきたんだと僕は考えています。

そうした背景がありながら最近は有償にも関わらず質の低い作品、例えば素人が棒読みしただけのような作品を耳にする機会が増えたなと思っていました。同人音声の価格帯については既に説明した通りですが、低価格帯ではなくボリュームゾーンの価格帯でこういった作品を耳にする度に疑問に思っていたのですがこれについては前述のまとめを制作され、今回同人音声作品の受付を休止された声優のまさきふぁん氏が以下のように語られている内容と関係があると考えられます。

しょうがないんですよ。だって…悪い言い方をすれば誰でも出れるようになったし…

そもそも声優をやってない完全な素人というかコスプレイヤーだったりとか…そういう人まで参戦してますから(決してコスプレイヤーを悪く言うわけじゃなくて!)

意識が高い方もいらっしゃれば、低い方も当然いらっしゃるわけで。

同人音声作品の受付休止のお知らせ | ボルボックスの知らせ。

催眠音声や耳かき音声…添い寝音声なんかは「人気があるから作ってみたい。売れるんでしょ?」って理由で作る人も物凄く増えました。

それが悪いことではありません。儲けたいから売る…なんにも悪いことじゃないです。

でも…だからそこに心がないというか…

同人音声作品の受付休止のお知らせ | ボルボックスの知らせ。

作る側のマナーの低下だけでなく、参加する側の声優の対応も重なって……

どんどん「音声作品はちょっと…」と避けられるようになったのかなと思います。

だから、参加するだけだった声優が作る側を始めて「声優がやっている音声サークル」がとても増えたと思います。

同人音声作品の受付休止のお知らせ | ボルボックスの知らせ。

サークルや作り手の思惑は僕には想像することしかできませんが、数が増えた背景にはこういった理由もあるのでしょう。もちろん近年参入されたサークルさんの中には非常に実用性の高い作品を作られているサークルさんも多く、作り続けて行く中でDL数が伸びていたりもします。

誰がどんな作品に実用性を見出すかはわからないので、前述した自分が質が低いなと思った作品にも需要はあるのかもしれません。しかし実際にそういった作品がヒットしているところを見たことはありません。今回数字を出す上で売れている数字ばかりあげましたがDLsiteで販売されている音声作品のうち、DL数が500以上の作品数は6473作品中743作品しかありません。もちろんDL数は作品の全てではなく、評価軸の一つでしかありません。DL数が少なくても評価が高く、質の高い作品は沢山あります。

もちろんサークル側としては手間隙かけて作ったものですから売れて欲しいと思っていると思います。上を見て儲けられると思ってもおかしくはないと思いますし、極端な話「台本」と「声」さえあれば作成することができる同人音声は他のコンテンツと比べて参入障壁は低いと思います。もしもその参入障壁の低さが今回噴出した問題とつながっているとしたら、それは極めて残念なことです。

そもそも同人音声が普及した背景を考えればユーザーが作品に求めている質は高いと思われます。そしてその質を下支えしてきた声優の多くから「同人音声はちょっと…」という意見が出てきてしまわざるを得なくなってしまった現状は僕個人としては好ましい状況ではありません。

最後に

今まで同人音声を支えてきた声優が同人音声への出演を見送ることが増えれば作品の質の低下を招きかねないでしょうし、そういった作品ばかりが増えて購入者が減り、目に見えてDL数の少ない作品ばかりになれば今質の高い作品を作っているサークルが作品の制作をやめてしまうかもしれません。そういった事態にならないでほしいと思っていますし、その上で購入者ができることは「これは」と思った作品を積極的に評価していくことだと思っています。

DLsiteには評価の機能もありレビューすることもできます。前者は利用したことはありますがレビューはいままでにしたことがありませんでした。今後は自戒を込めて作品を評価することで一購入者として同人音声の発展に助力できればと思い、今後もよりよい作品にめぐり合うことができることを願って止みません。

参考

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